ストレスが続くとストレスに弱くなる
海馬は、側頭葉の内側上部にあります。記憶に関する重要な脳部位であり、海馬が障害されると新しいことを覚えることが出来なくなってしまいます。
図1 海馬の位置、海馬は側頭葉の内側に存在します
これまで神経細胞は他の細胞と異なり再生しないとみなされていました。しかし、最近になって海馬の歯状回では新しい神経細胞が次々に生まれてくることが明らかになってきました。
下の図は海馬歯状回における神経新生の様子を示したものです。幹細胞が徐々に分化し成熟した顆粒細胞になります。
図2 海馬における細胞新生
最近になって、海馬はストレスに対処する主要な脳部位であることがわかってきました。
そして、神経新生とストレスの関係が徐々に明らかになってきました。たとえば、ストレスによって神経新生が妨げられることが動物実験の結果明らかになっています。また、抗うつ薬は神経新生を促進することが明らかにされています。実験的に神経新生を阻害すると、ストレスに対して過剰に反応したり、ストレスに抵抗する力が弱くなることも分かってきました。
こうしたことから、ストレスが続くことは、脳の細胞が生まれてくるサイクルに悪影響を与えることが分ります。ストレスに耐えていればやがて慣れていくという考え方は間違っていると言えそうです。職場で定期的にストレスチェックを実施することは、脳を守る上でも重要なことと言えるでしょう。